http://matome.naver.jp/odai/2139083495443129601
日経プリスリリース より
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=353873&lindID=5
癌は、容易に正常細胞や良性細胞へ変換できる
単一のマイクロRNAの導入により
~抗癌治療や再生医療としての応用に期待~

【概要】
 鳥取大学の研究グループ(代表:鳥取大学医学部病態解析医学講座薬物治療学分野 三浦典正 准教授)は、自身がクローニングしたRNA遺伝子の機能解析に従事している際、この遺伝子に関連して発現変動する単一のマイクロRNAを悪性度の高い未分化癌に導入すると、容易に悪性度を喪失させることができ、正常幹細胞へ形質転換できることを、世界で初めて発見しました。同研究グループは、2012年に、肝癌において未分化型や高分化型細胞株を用いて、in vivo(免疫不全マウスを用いた動物実験)において、いずれも悪性形質を失わせ、成熟型奇形腫、正常肝組織、腫瘍非形成の3種のパターンに誘導できることに成功しています。また他の未分化型癌においても可能であり、本分子が有用であることが明らかになりました。このたった1つのRNA分子からなる製剤開発により、癌に対する有効な医薬品に応用できるものと期待されます。
 本成果は、国際的科学誌である「Scientific Reports 誌」のオンライン版で平成26年1月24日に公開されました。なお、本研究は、文部科学省科学研究費(挑戦的萌芽研究)、独立行政法人 科学技術振興機構(JST)A-STEP【FSステージ】シーズ顕在化、武田科学振興財団研究、高松宮妃癌研究基金の助成研究として行われました。

■背景
 研究グループ代表は、自身のクローニングした遺伝子がRNA遺伝子であり、癌の第一抗原と目されてきたヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子(hTERT)と関連して、特に未分化なヒト癌細胞において、その発現を制御させる性質をもつ特異な遺伝子として、発がんや癌の悪性度に関わる遺伝子として機能解析をしてきました(2009年BMC Mol.Biol.に発表)。また、未分化型悪性黒色腫でも当該RNA遺伝子が増殖抑制できることを、製剤候補としてハイドロゲルやアテロコラーゲンを用いて確認してきました(2013年Nucleic Acid Therapeuticsに発表)。この度、このRNA遺伝子をshRNA法という遺伝子発現を抑制する手法により10種程度のヒトマイクロRNAが発現変動することを突き止め、その1つ1つを癌細胞の中へ導入することで、最も癌を制御できる有効なものを検討しました。その結果miR-520dが驚くべき現象を誘導しました。
 2012年2月に、山中教授らが当初iPS作製に使用した293FT細胞、または未分化な肝癌細胞、膵癌細胞、脳腫瘍、悪性黒色腫細胞で、球状の幹細胞または癌幹細胞様の細胞へ容易に変化させ、その細胞はP53という癌抑制遺伝子を高発現していることを見出しています。それまでは、マイクロRNAのがんや再生医療の報告として、miR-302 family,miR-369,200cに関して多数種の併用でリプログラミングの試みがなされていますが、たった一つでこのような効果をもたらす報告はありませんでした。


■内容
 本研究では、まず未分化な肝癌細胞がmiR-520dにより、12時間程度でP53,Nanog,Oct4陽性の細胞へ変化し、miR-520d導入細胞がマウスでその癌とは全く異なる組織(奇形腫や正常肝臓組織)を形成したり、腫瘍を全く形成しなかったりすることがわかりました。高分化型癌でも1ヵ月程度で同様の細胞へ変化します。このことは、悪性度の高い低分化なものほど容易に良性形質になりやすいことを意味します。この結果から、メカニズム解析と同時に、治療的効果の検討を行っており、脱メチル化による脱分化誘導がその原因の1つであることも証明しました。
 他の癌でも派生元の細胞の性質をより強く持つ全く異なる細胞へ形質転換できることから、多くの未分化な癌細胞で有用な分子であることがわかりました。たった一つの生体分子が、このように劇的に癌細胞の状態を変えてしまうことは、癌根絶の夢が目前に来ており、この領域の研究及び製剤開発が推し進められることで早期に実現する可能性も高まりました。

■効果
 医療の現場では、癌細胞は集学的に研究や治療が試みられており、癌幹細胞の根絶が困難なため再発が、担癌患者の心身を蝕みます。この小さなRNA分子(20mer)のメリットは、癌幹細胞への感受性が高いことで、他に治療法のない末期的な担癌状態に奏効すること、また抗がん薬で有効でなかった癌細胞に癌治療のアジュバント療法として奏効する可能性が極めて高いことです。このRNAからなる癌細胞へ送達できる製剤との併用により、従来にない作用機序の医薬品としての応用が期待できます。また癌に対する核酸医薬の中心的な役割を果たすことが期待できます。またP53の発現を誘導することから、再生医療でもiPS細胞の品質管理などに応用できる可能性があります。