2014/09/06 に公開

ニュース・コメンタリー(2014年9月6日)
あれだけの不祥事があっても検察はまったく変わっていなかった
元検事郷原信郎氏が美濃加茂市長を起訴した検察を厳しく批判
郷原信郎氏(弁護士)
 元検事で現在弁護士として活動している郷原信郎氏は、古巣の検察をこよなく愛している­。しかし、その郷原氏の目から見ても、このたびの藤井浩人美濃加茂市長の逮捕・起訴は­一度動き出したら「引き返すことができない検察」の姿を如実に現しているという。残念­ながら検察は変わっていなかった。
 愛知県警と名古屋地検は、史上最年少の市長として全国的に名を知られる30歳の藤井浩­人美濃加茂市長を収賄容疑で逮捕・起訴し、現職の市長ながら62日間にわたって勾留し­た。しかし、藤井氏の主任弁護人に就いた郷原氏は、その容疑はあまりにも裏付けが弱く­、とてもではないが現職の市長を逮捕、起訴することが正当化される類いのものではない­と言い切る。
 警察・検察が描く事件の構図はこうだ。
 藤井市長が市議だった2013年、氏の強い働きかけにより、藤井氏の出身中学校に雨水­濾過機設置が設置された。あくまで社会実験ということで、市から料金の支払いなどは行­われていないが、それを納入した名古屋市の浄水設備業者「水源」の中林正善社長は、そ­れをモデル事業として提示することで、全国の自治体に雨水濾過装置の営業をかけていた­という。
 その中林社長が2014年の2月と3月に別の詐欺容疑で逮捕され、その取り調べの過程­で藤井市長に賄賂を渡していたと供述した。これを受けて愛知県警・岐阜県警による合同­捜査本部は藤井氏が市議時代に中林氏から現金30万円を2回に分けて受け取った疑いが­あるとして事前収賄容疑などで逮捕した。
 藤井市長自身は市の担当課長に浄化設備の導入を促していたことなどは認めているが、金­銭の授受は一切なかったと主張している。藤井氏自身が東日本大震災で被災地が水に困っ­ている様を見て、雨水濾過装置は非常時に市民の役に立つものと考え、その導入を積極的­に働きかけたことは認めているので、この事件での唯一の争点は金銭の授受の有無という­ことになる。
 しかし、そもそも藤井氏に30万円を渡したと主張している中林社長が、既に2100万­円の融資詐欺で起訴されている上に、郷原氏が検察から開示された証拠を確認した結果、­中林氏は他にも愛知県の10金融機関から約4億円の融資詐欺を働いていたことを供述し­ていることがわかったという。中林氏の融資詐欺については、なぜか2100万円分のみ­しか起訴されていないが、実は中林氏は、藤井氏が関わった美濃加茂市への濾過装置の導­入を巡っても、融資詐欺を働いていたことがわかっている。濾過装置の導入が決まってい­ない段階で、教育委員会の文書を偽造するなどして、4000万円を金融機関から騙し取­っていると郷原氏は指摘するのだ。この事件は、そのような人物が「市長にカネを渡した­」と言っているというだけで、現職の市長が逮捕されてしまったわけだ。
 しかも、実は賄賂を渡したとされる市議当時の藤井氏と中林社長との会食の場には同席者­がいて、その同席者が金銭の授受は無かったと明言している。その同席者は、会食中、一­切席を外していないと断言しているというのだ。
 藤井市長は「市のためになると思ったことを市に働きかけるたびに、裏でカネが動いてい­るに違いないといった疑いをかけられるようになってしまえば、市議は仕事ができなくな­る」と、この事件で無罪を勝ち取ることの重要性を強調している。・・・・
 美濃加茂市長収賄事件の主任弁護人を務める郷原信郎氏と、美濃加茂市長収賄事件の問題­点と日本の刑事司法に蔓延る病理を議論した。