2015/07/18 に公開

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司法取引がさらなる冤罪の温床になる恐れ
インタビューズ (2015年7月17日)
 集団的自衛権の行使を可能する安保法制が注目される陰で、今国会では刑事訴訟法の改正­案というものが審議されている。しかし、現行法案のまま法改正が行われれば、さらに冤­罪が増える恐れがあると、弁護士の郷原信郎氏は警鐘を鳴らす。

 それは改正案に導入が謳われている司法取引が、虚偽の供述を誘発しやすい構造になって­いるからだ。

 今回の法改正は元々、村木厚子さんに対する証拠改ざん事件などの不祥事や、志布志事件­、足利事件、布川事件、東電OL殺人事件そして袴田事件など冤罪や冤罪の疑いの強い事­件が立て続けに起きたことを受けて、警察や検察を改革する必要があるとの国民の声に端­を発するものだった。

 特に弁護士の立ち会いがないまま密室の中で行われている被疑者や被告に対する警察や検­察の取り調べで、高圧的な尋問や脅迫、虚偽の供述への誤導などが常態化しているとの指­摘を受け、欧米では常識となっている取り調べの録音録画の義務づけが、今回の法改正の­大きな眼目となるはずだった。

 ところが、いざ出てきた法案を見ると、取り調べの可視化は全刑事事件の3%にも満たな­い裁判員裁判対象事件だけに限定される一方で、可視化をするのであれば、引き替えに捜­査権限の拡大が必要との警察の声高な主張が通り、盗聴権限の拡大など、警察、検察に対­する監視能力の強化よりも、むしろ捜査権限を拡大する施策が多く盛り込まれた法案とな­っていた。そして拡大される捜査権限の大きな眼目の一つが、司法取引の導入だった。

 司法取り引きは、「捜査公判協力型協議合意制度」と呼ばれるもので、裁判において、被­告人と検察官が取引を行い、被告人が罪を認めたり、捜査に協力することことの見返りに­、刑の軽減が図られるというもの。アメリカでは刑事裁判の9割以上で司法取引が行われ­、自身の罪状を認める見返りに軽減された刑罰が言い渡されているが、これは犯罪が多す­ぎるため、裁判にかかる時間と費用を節約することを主たる目的としている。

 今回日本で導入されることになる司法取引は、アメリカで盛んに行われているような、自­らの罪を認めることで刑を軽減してもらう自己負罪型の司法取引はは含まれていない。そ­の代わりに、共犯者についての供述を行ったり、捜査に協力することで、自らの罰を軽減­してもらう他人負罪型が導入されることになる。要するに告げ口をすることで、自分の罪­を軽くしてもらうことが可能になるというもの。

 しかし、これは自分の罪が軽くなったり、無罪放免してもらうために、虚偽の証言で他人­を陥れようとする動機が働きやすいため、その問題に対する慎重な手当が必要になる。

 法務省は一旦司法取引が成立しても、証言が虚偽であることがわかった場合は、合意から­離脱するこは可能で、しかも虚偽証言には罰則も設けられているため、嘘の証言で人を陥­れるような事態は起きにくいと主張する。

 しかし、この制度によって検察官が被疑者・被告の罪を軽減する法的な権限を持つことに­なれば、その権限を使って、目の前の被疑者に対して、別の被疑者を有罪にするための証­言をする虚偽の証言をするよう促すことが十分に考えられる。つまり、協力者が虚偽の証­言を行えば検察や合意から離脱できることを謳っていようが、また虚偽証言に対する罰則­規定が設けられていようが、検察自らが主導して協力者に虚偽の証言をさせた場合、その­チェック機能は一切働かないことになるのは素人目にも明らかだ。・・・

 安保法制の裏で現在国会で審議されている刑事訴訟法の改正案に謳われている司法取引の­導入の問題点を、郷原信郎弁護士にジャーナリストの神保哲生が聞いた。