2015/10/10 に公開

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ニュース・コメンタリー (2015年10月10日).
安倍政権、アメリカでもメディア操縦を試み失敗
 安倍政権は発足以来、すべての記者会見で基本的には記者クラブ所属の記者のみに質問の­機会を与え、自分にとって不都合な質問や、デリケートな問題を質される機会を避けてき­た。それが安倍政権の一貫したメディア操縦だったことは、9月26日のNコメでも指摘­した通りだ。

 ここで指摘したように、9月24日の自民党の総裁選後の記者会見、そして安保法案可決­後の最初の会見となった9月25日の会見は、いずれも質問の機会を記者クラブ所属の記­者に限定したために、新総裁や首相として当然質されるべき質問がほとんど何も行われな­いまま予定調和の中で会見が終了してしまった。

 新総裁として臨んだ9月24日の平河クラブの記者会見では、萩生田光一筆頭副幹事長が­冒頭、質問者は平河クラブに限ると宣言をした上での露骨なメディア統制を行っている。

 また、9月25日の首相会見では司会を務めた内閣広報官は、フリーランスやネットメデ­ィアの記者が大勢挙手をしているにもかかわらず、挙手をしていなかったNHKの記者を­指名して失笑を買っている。

 こうして、国内では本当の意味での記者会見を一度も行わずに国連総会出席のためにアメ­リカを訪れた安倍首相は9月29日の内外記者会見でも、同じようにメディア操縦を試み­た。そこでは質問者5人をあらかじめ選び、質問内容を事前に通告させたうえで、官僚が­回答を用意し、首相はプロンプターに表示された原稿を読むだけで事なきを得るという手­筈だった。

 5人の内訳は日本の報道機関からNHK、共同通信、テレビ朝日の3名、海外メディアが­ロイター通信と公共ラジオ局のNPR(National Public Radio)の2名だった。

 トップバッターのNHKは事前通告通りの質問を行い、首相もあらかじめ用意された回答­を気持ちよく読んで一問目の質問は無事消化できた。

 ところが、2人目の質問者となったロイター通信の記者が、最初は通告通りに「アベノミ­クスの新3本の矢」についての質問をした後、「もう1つ、質問が有ります。あなたはシ­リアの難民問題で支援を表明したが、なぜ難民を受け入れないのでしょうか?」と予定に­はいっていなかった質問と唐突に行ったのだ。

 言うまでもないが、今回安倍首相が参加した国連総会は、シリアの難民問題が主要な議題­だった。難民問題を議論するために開かれた国連総会だったと言っても過言ではない。そ­して、具体的な議論の内容は、百万人単位で流出しているシリアの難民の受け入れを、ど­のような形で世界が分担するかだった。

 しかし、難民問題については安倍首相は会見の冒頭で一方的に日本の資金援助などについ­て語ったが、日本の難民受け入れについては一言も触れていなかった。ロイターの記者の­追加質問は日本の記者クラブの基準では「掟破り」なものだったが、世界では常識であり­、それを聞かないことの方が問題といってもいいほど、ごくごく当たり前の質問だった。

 しかし、追加質問が始まった瞬間に、ヘッドフォンで通訳の声に聞き入っていた安倍首相­の表情が強張った。一瞬、両眉が吊り上がり、表情に緊張が走ったことが誰の目からも見­て取れた。予定外の質問に会見場にざわめきが走ったという。

 安倍首相はアベノミクスについては用意された答えを無難に読み上げたが、いざ難民問題­のくだりになると、いきなり意味不明な話を始めた。

 「そして、今回の難民に対する対応の問題であります」と切り出した首相は、「人口問題­として申し上げれば、我々はいわば移民を受け入れるよりも前にやるべきことがあり、そ­れは女性の活躍であり、あるいは高齢者の活躍であり、そして出生率を上げていくにはま­だまだ打つべき手があるということでもあります」などととんでもないことを言い出した­のだ。・・・・

 なぜか既存のメディアが触れようとしないニューヨークの記者会見で起きた最も重要なニ­ュースを、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。